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■月のない路 慧理NOVEL■

 全く…、どうしてこうなっちゃうのかしら?
 お料理もお花もぜーんぶ覚えたっていうのにねー。
 着付けだって出来るのよ?


 でも肝心なことが出来ないのね。


 どれだけ自分に自信をつけたつもりでも、結局は”つもり”なのね。
 誰よりも綺麗で誰よりも魅力的で…誰よりも強いはずなのよ?
 普通だなんていわせない。
 私は特別になるために今まで頑張ってきたんだもの。


 あぁもう…!


 ダメねー、どうして今日はこうもむしゃくしゃするのかしら。
 こういう日はあれね。
 せっかく新しいサウンドバックも入れたことだし。


 いっちょ思いっきり暴れてみますかぁー。


 大きく開けた窓から風を受けて、んー、と伸びをする。
 そうだわ、折角だからお父様からトンファーも借りてきましょ。
 いつでも使いこなせるようになっておかなきゃ。


 そんな日がきたらビックリだけどね。


 でも最近は日本の治安も悪くなってきてるっていうから…、いつかは使う日がくるかしら?
 だったら出来るだけ携帯しとかないといけないわねー。
 やっぱり素手より武器があった方が強いものね?




 早速サウンドバックを吊るして、トンファーを構える。
 もう何度も使ってきているし、姿はさまになってるだろうと自覚する。
 そして完全に構えに入った途端、精神を集中させて、サウンドバックへ向かった。


 ………え?サウンドバックが真っ二つ??


 一撃を入れたサウンドバックに目をやれば…。
 綺麗に割れ、哀れな姿と化したものがあった。


 古くなってたのかしら?
 でも確かに新品だったわよね??


 綺麗に真ん中から真っ二つになったから、何か清々しいけど。


 軽く打ったつもりなんだけどなぁ…、力が入ってたのかしら?
 確かにむしゃくしゃしてたけど…。
 でもだからって普通、真っ二つになんかならないわよねぇ?
 あらやだ。
 私、強くはなりたいけど、怪力女になるつもりはないのよ?
 …たまたま急所を当てちゃったのかしら。


 真っ二つになったサウンドバックから、風に吹かれて中身が散る。


 どんなものにでも急所はあるっていうから…。


 ま、次からは気をつけましょう。



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